ITエンジニアを目指す人が、最初の目標として選ぶことの多い基本情報技術者試験。なぜ、この国家試験は多くの学生や社会人に支持されているのでしょうか。試験の位置付けや学べる知識、取得を目指すメリットを詳しく解説します。
基本情報技術者試験とは
基本情報技術者試験は、ITエンジニアに必要とされる基本的な知識と技能を幅広く問う国家試験です。プログラマーやシステムエンジニアを目指す人にとっての「登竜門」として50年以上の歴史をもち、学生から社会人まで多くの人が受験しています。2025年度の実績で147,186人が受験する人気資格です。
本試験は、情報処理に関する知識と技能を認定する「情報処理技術者試験」の試験区分の一つに位置付けられています。情報処理技術者試験は「情報処理の促進に関する法律」に基づいて経済産業大臣が実施する国家試験であり、実際の試験運営は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行っています。
基本情報技術者試験に合格することは、ITを活用したサービス・製品・システム・ソフトウェアを作る人材として必要な基本的知識・技能を備え、それらを実践的に活用するための基礎が身に付いていることの証明になります。特定のメーカーや製品の利用方法を認定する民間資格とは異なり、基本情報技術者試験は、特定の企業や製品に依存しないベンダーフリーの試験です。そのため、取得した知識を幅広い業種や技術分野に応用しやすいことが特徴です。

ITエンジニアの登竜門として人気の国家試験
基本情報技術者試験は、主にプログラマー・システムエンジニア・インフラエンジニアなど、ITシステムの企画・開発・運用に携わる人を対象としています。
IT業界では古くから「ITエンジニアの登竜門」として認知されており、情報処理を学ぶ大学生や専門学校生、IT企業に入社した若手社員などが、最初の目標として受験することの多い資格です。
企業によっては、新人研修の学習目標として基本情報技術者試験を採用したり、入社後の一定期間内に取得することを推奨したりしています。大学・短期大学・高等専門学校・専門学校などでも、授業や資格取得講座の一環として試験対策が行われています。
もっとも、IT業界には独占業務はないため、資格をもっていなければプログラミングやシステム開発の仕事ができないわけではありません。資格を取得しなくても、ITエンジニアとして働くこと自体は可能です。
また、現在のプログラミング言語や開発ツールは高度に抽象化されており、内部の仕組みを詳しく知らなくても、ある程度のプログラムを作成できます。生成AIを利用してプログラムのひな型を作ったり、エラーの原因を調べたりすることも容易になりました。
しかし、便利なツールが増えたからこそ、その出力が正しいか、安全か、効率的かを判断するための基礎知識が重要になっています。
データの表現形式にはどのようなものがあるか、プログラムがどのような手順で処理を行い、ネットワークを通じてどのように情報が交換されるのか、どのような設計方法があるかなどを理解していなければ、継続して品質の高いシステムを提供すること、不具合やセキュリティ上の問題を適切に発見することは困難です。
木が大きく育つためには、地中にしっかりと根を張る必要があります。ITエンジニアにとって、コンピュータ科学やシステム開発に関する基礎知識は「基礎数学」「物理学」のようなもので、その後の成長を支える根に当たります。
特定のプログラミング言語や開発ツールは流行があり時代とともに変化しますが、アルゴリズムやデータ構造、データベース、ネットワーク、情報セキュリティなどの基礎的な考え方は、技術が変化しても広く活用できます。
基本情報技術者試験が長年にわたって多くの人に支持されているのは、国家試験というネームバリューとともに、こうしたIT分野の基礎を体系的に学ぶことができる試験だからです。

IT技術者以外にも役立つ知識
基本情報技術者試験は、ITエンジニアだけのための資格ではありません。現在では、一般企業の営業・企画・総務・経理・製造・物流・マーケティングなど、さまざまな部門でITシステムが利用されています。業務のデジタル化やDXを進めるためには、システムを開発する側だけでなく、システムを利用し、導入を企画し、開発会社に要件を伝える側にも一定のIT知識が必要です。
例えば、新しい業務システムを導入するときには、現場の業務を整理し、必要な機能を明確にし、開発会社や情報システム部門に伝えなければなりません。その際、データベース・ネットワーク・情報セキュリティ・システム開発工程などの基本を理解していれば、関係者との意思疎通を円滑に進めやすくなります。
特に情報漏えいやランサムウェア、不正アクセスなどの脅威が身近になった現在では、情報セキュリティも一部の専門家だけが理解していればよい知識ではありません。組織で情報を扱うすべての人に、適切な判断が求められます。
基本情報技術者試験では、ITの技術だけでなく、企業活動・経営戦略・法務・プロジェクトマネジメントなども学びます。そのため、技術者と利用部門の橋渡しをする人や、将来DX推進に携わりたい人にとっても有用です。
受験者の中心は若年層ですが、実際には中学生・高校生から社会人、シニア層まで、幅広い年代の人が受験しています。進学や就職に向けて学ぶ人だけでなく、異業種からIT業界への転職を目指す人、現在の仕事にIT知識を生かしたい人、自己啓発としてコンピュータの仕組みを学びたい人にも適した試験です。
試験で問われる内容
試験では、一般的に想定されるコンピュータやネットワーク、データベース、情報セキュリティ、アルゴリズム、プログラミングなどの技術的なIT知識だけでなく、プロジェクト管理・経営戦略・会計・法務といった分野も出題されます。非常に試験範囲が広いことが特徴の一つです。また、単に用語を暗記するだけの試験ではありません。ITを利用したサービスやシステムがどのような仕組みで動き、どのように企画・開発・運用されているのかといったITの素養に関わる広い知識を体系的に理解することが求められます。
具体的には、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3つの分野があります。
- テクノロジ系(技術的内容)
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基礎理論、アルゴリズムとプログラミング、コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、ヒューマンインタフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術コンピュータや情報システムの技術に関する分野です。
基本情報技術者試験の中心となる分野であり、コンピュータの内部で情報がどのように処理されるのか、プログラムがどのように動作するのか、複数のコンピュータがどのように通信するのかといった知識が問われます。 - マネジメント系(業務管理内容)
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プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査ITサービスやシステム開発を適切に管理するための分野です。
システム開発は、プログラムを書くだけでは完了しません。納期、費用、品質、作業範囲、リスクなどを管理し、関係者と連携しながら進める必要があります。 また、完成したシステムを安定して利用し続けるためには、障害対応、変更管理、サービス水準の管理なども必要です。マネジメント系では、こうした開発・運用管理の基本が問われます。 - ストラテジ系(経営管理内容)
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システム戦略、システム企画、経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ、企業活動、法務企業経営や事業活動の中でITをどのように活用するかを扱う分野です。
企業が抱える課題を解決するために、どのような情報システムを導入するべきか、ITを利用してどのように競争力を高めるかといった考え方を学びます。 財務・会計、知的財産権、労働関連法規、標準化など、技術以外の知識も出題されます。
このように、基本情報技術者試験の範囲は非常に広く、ITシステムの技術・開発・運用・管理・経営への活用までの基本となる知識を横断的に学ぶ構成となっています。
基本情報技術者試験の「科目A免除制度」とは
基本情報技術者試験には、事前にIPA(情報処理推進機構)認定講座やeラーニングを修了し、修了試験(科目A免除試験)に合格することで本試験の「科目A試験」が1年間免除される制度があります。この制度を活用することで、学習中や試験当日の負担を大きく減らすことが可能です。
科目A免除制度を利用する3つのメリット
- 本番当日は「科目B試験」対策に集中できる
- 通常は科目Aと科目Bを同日に受験する必要がありますが、免除制度を使えば当日は科目Bのみ受験。長時間の試験による集中力低下を防ぎ、難易度の高い科目Bに特化した対策が可能になります。
- 免除資格は1年間有効で再受験でも安心
- 一度免除試験に合格して免除資格を得ると、その後1年間(複数回の本試験)にわたって科目Aが免除されます。万が一不合格だった場合でも、期間内であれば次回も科目Bのみの受験で再挑戦できます。
- 免除試験は受験チャンスが最大2回ある
- 免除試験に対応するコースの申込時期により、免除試験は最大2回(例:6月・7月 または 12月・1月など)受験できます。合格チャンスが複数回あるため、精神的な余裕を持って臨めます。
科目A免除制度かんたんガイドを見る(PDFに遷移します)
※共同制作:免除認定講座「独習ゼミ」(SEプラス)
ITパスポート試験との違い
ITパスポート試験と基本情報技術者試験は、どちらも情報処理技術者試験に含まれる国家試験ですが、対象者と求められる能力の水準が異なります。
ITパスポート試験は、ITを利用するすべての社会人や学生を対象とした試験です。IT・経営・マネジメントに関する基礎知識が幅広く問われます。これに対して基本情報技術者試験は、ITを利用するだけでなく、ITを活用したサービス、システム、ソフトウェアを作る人材を主な対象としています。基本情報技術者試験は、ITパスポート試験よりも出題範囲が広く、各分野で問われる知識も深くなります。特に大きな違いは、アルゴリズムとプログラミングに関する知識・技能が本格的に問われることです。
2023年(令和5年)4月の試験制度改定に伴い、科目B試験において20問中16問がアルゴリズムとプログラミングの問題になっており、ITパスポートでプログラミング問題を捨てて合格した人も、これを避けては合格することはできません。ITパスポート試験に合格した人が基本情報技術者試験へ進む場合、この科目B対策が最も大きな壁になりやすいでしょう。とはいえ、入門的な資格ですから、初学者でも独学で短期合格することは十分に可能なレベルです。
基本情報技術者試験の沿革
- 1970年(昭和45年)
- 情報処理技術者認定制度の法制化に伴い、「第二種情報処理技術者試験」として創設されました。
- 1988年(昭和63年)
- 試験が年2回の実施となりました。
- 2001年(平成13年)
- 新しい試験制度への移行に伴い、名称が「基本情報技術者試験」に変更されました。
- 2005年(平成17年)
- 現在の科目A免除制度につながる、午前試験の免除制度が導入されました。
- 2009年(平成21年)
- 試験制度が大きく改定され、マネジメント系やストラテジ系の分野が拡充されました。午後試験のプログラム言語に表計算が加わるなどの変更がありました(初級シスアド試験の範囲を吸収)。
- 2020年(令和2年)
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、従来の筆記方式からCBT方式へ移行しました。プログラム言語からCOBOLが外され、代わってPythonが追加されました。午後が13問中7問回答から11問中5問回答に変更されました。
- 2023年(令和5年)
- これまでの上期・下期の試験期間がなくなり、年間を通じて受験できるCBT方式の試験となりました。従来の午前試験は「科目A試験(小問60問:90分)」、午後試験は「科目B試験(小問20問:100分)」に再編されました。科目B試験は小問形式となり、個別のプログラミング言語(C、Java、Python、アセンブラ、表計算)を選択する方式が廃止され、疑似言語を使ったアルゴリズムとプログラミングの問題に統一されました。
試験区分は「FE」
情報処理技術者試験では、各試験区分にアルファベットの略称が付けられています。例えば、ITパスポート試験は「IP」、情報セキュリティマネジメント試験は「SG」、応用情報技術者試験は「AP」と表記されます。
基本情報技術者試験の略称は「FE」です。これは、基本情報技術者試験の英語名称である「Fundamental Information Technology Engineer Examination」に由来します。当サイトのドメイン「fe-siken.com」にも、この「FE」が使われています。
基本情報技術者試験とは、
- ITエンジニアに必要な基本知識と技能を体系的に学べる
- 技術、管理、経営の三つの側面からITを理解できる
- 年間を通じて受験できる
