平成26年春期試験午後問題 問6

問6 プロジェクトマネジメント

ファンクションポイント法を用いた工数見積りに関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。

 A社では,名簿データ管理システム開発プロジェクトの計画を策定中であり,アプリケーション設計チームで作成した図1に示す処理フロー図を基に,工数見積りを行う段階に入った。工数見積りの結果がコスト見積り時の根拠となるので,正確性の確保はもとより,プロジェクトにおける各種の制約条件を考慮したものとする必要がある。
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〔処理フロー図の説明〕
 名簿データ管理システムは,名簿の提供者から受領する名簿データを取り込み,データを整備し,名簿データの利用者からの要求に応じて,データを抽出する。また,利用者から,抽出件数に応じた利用料金を徴収するための請求書を作成する。システムの処理ごとに,その説明を示す。
  • データ取込処理では,入力データを基にレコードを編集し,名簿マスタを更新する。入力インタフェースとして"オンライン接続(オンラインストレージサービスの利用)","電子記憶媒体授受"及び"授受リストを基にしたメンテナンス用端末からの入力"の3種類が用意されている。名簿マスタの更新ができなかったデータは,エラーファイルに出力する。
  • データ整備処理では,名簿マスタ更新時のエラーファイルを基に,メンテナンス用端末を使用して,レコードを編集し,名簿マスタを更新する。
  • データ抽出処理では,名簿マスタ及び抽出条件テーブルを参照し,目的のレコードを抽出して出力する。出力インタフェースとして"オンライン接続(オンラインストレージサービスの利用)","電子記憶媒体授受"及び"授受リスト"の3種類が用意されている。また,利用者ごとのデータ抽出処理の実行と抽出件数に関するログデータを出力する。
  • 請求書作成処理では,データ抽出処理で出力されたログデータ及び使用した出力インタフェースとデータ抽出件数ごとに設定された料金テーブルを参照して,請求金額を算出する。算出された請求金額を,請求レコード用フォーマットに編集して,請求書を出力する。
〔工数見積方法の説明〕
  • 工数見積りには,A社でアレンジした簡易ファンクションポイント法を用いる。簡易ファンクションポイント法は,ソフトウェアがもつ機能及び入出力インタフェースの数を基に,そのソフトウェアの開発規模を推定する手法である。図1で示す各処理の内容を,機能及び入出力インタフェースごとに分類し,それぞれをファンクションとして定義する。図1の処理フロー図から見積対象の処理ごとに,各ファンクションの個数を求める。
  • 求められた各ファンクションの個数を基に,処理ごとの開発規模を求める。名簿データ管理システムのファンクションとそれに対応する開発規模を表1に示す。
    pm06_2.png
  • 見積対象処理ごとに算出された開発規模と表2に示す開発生産性の計画値から,工数を算出する。
pm06_3.png

設問1

プロジェクト管理グループに属する社員Bは,プロジェクトマネージャの指導の下,工数見積方法に従い,図1の処理フロー図に示された各処理の開発に要する工数を算出して,表3にまとめた。表3中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
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a に関する解答群
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
b に関する解答群
  • 1.0
  • 2.0
  • 2.5
  • 4.0
解答選択欄
  • a:
  • b:
  • a=
  • b=

解説

aについて〕
(3)「データ抽出処理では,…出力インタフェースとして,"オンライン出力","電子記憶媒体授受"及び"授受リスト"の3種類が用意されている。また,…ログデータを出力する」と説明されています。
処理フロー図の「データ抽出」から出ている矢印は4本あり、4つうち「オンラインストレージ」「電子記憶媒体」「ログデータ」への出力がファイル書込み,1つだけ帳票を表すアイコンが使われている「授受リスト」が帳票出力となります。
pm06a.png
したがってファイル書込みのファンクション数は3つが適切です。

a=ウ:3

bについて〕
bには、データ整備処理の工数合計が入ります。
データ整備処理の開発規模合計は、表3より2.0kステップとわかるので、表2の開発生産性計画値「0.5kステップ/人月」を使用して工数を算出します。

 2.0÷0.5=4.0

したがって工数合計は4.0人月になります。

b=エ:4.0

設問2

設問1で求めた工数を基に算出した開発コストは,プロジェクトで想定している開発コストの計画値を上回った。社員Bはプロジェクトマネージャから,開発工数を削減する方法の検討を行うよう指示を受けた。
 社員Bは,処理別工程ごとの工数を表4にまとめた。表3及び表4を検証して,工数削減方法の検討を進めた。検討を行った作業に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。ここで,工程ごとの工数は,処理ごとの工数に工程比率を乗じて算出したものである。
pm06_5.png
 全ての処理に利用され,ファンクション別開発規模合計が最も大きいファンクションに対して対策を講じることが,工数削減の効果が最も大きいと想定し,表3から対象ファンクションをcと判断した。
 工数削減施策として,"対象ファンクションを共通部品として作成し,各処理に適用することによって,工数を削減する施策"を検討した。共通部品化によって,全工程の工数合計の 80 %に相当するd工程における工数の一部を削減することができる。
 例えば,データ抽出処理では,d工程の工数のうちe人月がcの工数なので,本施策によって工数削減を見込むことができる。
c に関する解答群
  • 端末画面
  • 帳票作成
  • ファイル書込
  • ファイル読込
  • レコード編集
d に関する解答群
  • 外部設計
  • 外部設計,詳細設計
  • 外部設計,詳細設計,製造
  • 外部設計,詳細設計,製造,総合試験
  • 外部設計,詳細設計,製造,総合試験,運用試験
e に関する解答群
  • 1.088
  • 1.44
  • 2.176
  • 2.72
解答選択欄
  • c:
  • d:
  • e:
  • c=
  • d=
  • e=

解説

cについて〕
対象ファンクションの選定条件は、
  1. すべての処理に利用されること
  2. ファンクション別開発規模合計が最も大きいこと
の2点です。

表3を見ると、「帳票作成」「端末画面」「レコード編集」はそれぞれ利用されない処理があるため対象から外れることがわかります。残る2つのファンクションの開発規模合計ですが、表3のaには設問1で求めた3が入り、その開発規模は 3×0.3=0.9 なので
  • ファイル読込み…1.0
  • ファイル書込み…0.6+0.3+0.9+0.3=2.1
したがって削数削減の対象となるファンクションは、より開発規模が大きいファイル書込みになります。
pm06b.png

c=ウ:ファイル書込み

dについて〕
選択肢のつい表4の工程比率を足し合わせて80%になるのは「外部設計,詳細設計,製造」の組合せしかありません。
  • 15%
  • 15%+25%=40%
  • 15%+25%+40%=80%
  • 15%+25%+40%+15%=95%
  • 15%+25%+40%+15%+5%=100%

d=ウ:外部設計,詳細設計,製造

eについて〕
表3よりデータ抽出処理のファイル書込みの開発規模は0.9、工数は(0.9÷0.5=)1.8人月になります。1.8人月のうち80%が「外部設計,詳細設計,製造」工程に相当するので以下のように計算できます。

 1.8人月×0.8=1.44人月

e=イ:1.44

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