平成22年春期試験午後問題 問7

午前試験免除制度対応!基本情報技術者試験のeラーニング【独習ゼミ】

問7 経営・関連法規

事業の分析に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

 SWOT分析は,企業又は組織の強み,弱み,機会及び脅威を分析する手法であり,事業戦略を策定するために利用される。ある地域で食料品の生産及び販売をしているA社の企画課では,自社の健康飲料事業の戦略を策定するためにこのSWOT分析を使って,内部環境や外部環境から導かれる課題を考察することにした。

設問1

A社の健康飲料事業の強みと弱みに関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。

 企画課のK氏は,上司から,自社の健康飲料事業の,競合他社と比較した強みと弱みを列挙し,それらを資産に関するものと業務プロセスに関するものとに分類するように指示を受けた。
 K氏は,A社の健康飲料事業の強みと弱みについて分析し,表1にまとめた。
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 表1の強みのうち,業務プロセスに関する記述は,①と③である。②の知的財産の件数や④の独占購入権は健康飲料事業のもつ資産に関する強みといえる。しかし,K氏の分析した強みの③については,a,上司の指示どおりになっていないので見直す必要がある。弱みのうち,資産に関する記述は,bである。
a に関する解答群
  • A社の健康飲料事業の内部で効果を上げているだけで,競合他社と比較すると劣っていることが明らかであり
  • A社の健康飲料事業の内部で効果を上げているものの,競合他社と比較した強みかどうかは不明確であり
  • 競合他社と比較した強みであることは間違いないが,A社の健康飲料事業の内部で効果を上げているかは不明確であり
  • 競合他社と比較した強みであることは間違いないが,A社の健康飲料事業の内部では明らかに効果を上げておらず
b に関する解答群
  • ①と②
  • ①と③
  • ①と④
  • ②と③
  • ③と④
解答選択欄
  • a:
  • b:
  • a=
  • b=

解説

SWOT分析は、企業の置かれている経営環境を分析し、今後の戦略立案に活かす手法のひとつです。
SWOTは、
  • S・・・Strength(強み)
  • W・・・Weakness(弱み・弱点)
  • O・・・Opportunity(機会)
  • T・・・Threat(脅威)
のように各単語の頭文字をとったもので、この中で強みと弱みは企業の内部要因、機会と脅威は外部環境要因に分類されます。

aについて〕
強み③「就業環境の改善を図るため…」は、選択肢の内容から①競合他社と比較した場合の強みであるか、②健康飲料事業の内部で効果をあげているか、の2点についての判断が求められます。

【①競合他社と比較した場合の強みであるか】
他社も同じような従業員満足度の調査・分析を行っているかは不明であり、もし行っていたとしてもその結果を業務改善に繋げてどの程度の効果を発揮しているかは不明確な部分です。

A社が他社と比べて優れているかも知れません。しかし他社のほうがA社よりも優れている可能性ももちろんあります。つまり競合他社として強みであるかは不明確な項目であると判断できます。

【②健康飲料事業の内部で効果をあげているか】
強み③内の記述「調査・分析の結果を業見改善に結び付けるノウハウを蓄積している。」から、この調査・分析業務が業務プロセスの改善に一定の効果をあげていると考えられます。

この2点を踏まえて考えると、aに入る語句は、選択肢イ「A社の健康飲料事業の内部で効果を上げているものの、競合他社と比較した強みかどうかは不明確であり」が適切であることになります。

a

bについて〕
②だけが資産に分類される弱みです。
製品ブランドに対する好感度、つまりブランド力は形がありませんが「資産」という位置づけになります。

一般にブランド力は、その商品やサービスについて広く知れ渡り、安心して利用できるという価値を消費者が認めている場合に高くなります。この価値はすぐに発生するものではなく、地道な企業活動、企業努力の積み重ねにより生じたものです。
このようにブランド力は、企業が長い年月(将来的に)にわたり、価値を生むものであり他社と競争をしていくためには欠かせない財産と位置つけられます。

aイ:②

設問2

A社の健康飲料事業の機会と脅威に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。

 K氏は,A社の健康飲料事業に関するSWOT分析の機会と脅威を考察するための準備として,A社の事業地域における健康飲料業界の収益性について分析を行うように上司から指示を受けた。K氏は,ファイブフォース分析を使って,業界における,売り手の交渉力,買い手の交渉力,新規参入者の脅威,代替製品の脅威及び競争業者間の敵対関係の強さを分析して,業界の収益性や成長性を評価することにした。
 例えば,新規参入者の脅威は,国の規制に守られている場合や,多大な設備投資が必要な業界の場合に低くなる。また,売り手の交渉力は,売り手の提供する製品やサービスが特殊ではなく,買い手が売り手を多数の候補の中から選べる場合に弱くなる。代替製品の脅威は,提供している製品やサービスに代わるものが,ほかにあまりない場合に低くなる。売り手や買い手の交渉力が弱いほど,また新規参入者や代替製品の脅威が低く競争業者間の敵対関係が弱いほど,業界の収益性は高くなりやすいと考えられている。
 K氏は,A社の事業地域における健康飲料業界の分析を行って上司に報告した。図は,K氏と上司が完成させた分析結果である。
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c,d,e に関する解答群
  • 栄養補助食品などの競合製品が多く
  • 脅威となる競合製品はほとんどなく
  • 供給業者の少ない固有の包装資材が多く
  • 供給業者の少ない固有の包装資材がなく
  • 消費者の健康意識レベルが高く
  • 消費者の健康意識レベルが低く
  • 特殊な設備が必要であり
  • 特殊な設備が不要であり
解答選択欄
  • c:
  • d:
  • e:
  • c=
  • d=
  • e=

解説

ファイブフォース分析は、業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法のことです。5つの競争要因とは、「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因です。

cについて〕
参入が容易である要因cを選択肢の中から探します。
設問中の記述「新規参入者の脅威は、国の規制に守られている場合や、多大な設備投資が必要な業界の場合に低くなる」より、国の規制がない場合または多大な設備投資が必要ない場合は、参入が容易になるとわかります。
したがってcに入る適切な語句は「特殊な設備が不要であり」であることがわかります。

cク:特殊な設備が不要であり

dについて〕
売り手の交渉力が強くなる要因d>を選択肢の中から探します。
設問中の記述「売り手の交渉力は、売り手の提供する製品やサービスが特殊ではなく、買い手が売り手を多数の候補の中から選べる場合に弱くなる」より、売り手の提供する製品やサービスが特殊または、同様の製品サービスを提供する売り手が少ない場合に、売り手の交渉力が強くなるとわかります。

「供給業者の少ない固有の包装資材が多く」あると、固有の包装資材をすべて手に入れることができる企業数が限られるので必然的に、売り手の数が少なくなります。
したがってdに入る適切な語句は「供給業者の少ない固有の包装資材が多く」であることがわかります。

dウ:供給業者の少ない固有の包装資材が多く

eについて〕
代替製品が多数あることの要因eを選択肢の中から探します。
設問中の記述「代替製品の脅威は、提供している製品やサービスに代わるものが,ほかにあまりない場合に低くなる」より、A社の提供する健康飲料にとって代わる競合製品が存在する場合は高くなることがわかります。
したがってeに入る適切な語句は「栄養補助食品などの競合製品が多く」であることがわかります。

dア:栄養補助食品などの競合製品が多く

設問3

A社の健康飲料事業の収益性に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。

 K氏は,分析した結果から,A社の健康飲料事業の収益性は高くなりにくいと考えた。K氏は,A社の健康飲料事業を社内のほかの事業と比較するため,表2のデータを入手した。
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 表2から,A社の健康飲料事業の収益性は,fことが分かる。K氏はこれまでの分析結果から考察した収益性と,表2から得た収益性から,A社の健康飲料事業が単独で収益性を高めることは難しいと考えた。そこでK氏は,A社の清涼飲料事業や加工食品事業の強みを健康飲料事業に横展開することが必要ではないかと考え,gという取組みを考えた。
f に関する解答群
  • 売上総利益率,営業利益率,経常利益率のすべてで最も高い
  • 売上総利益率,営業利益率,経常利益率のすべてで最も低い
  • 売上総利益率と営業利益率は最も高いが,経常利益率は最も低い
  • 売上総利益率は最も高いが,営業利益率と経常利益率は最も低い
  • 売上総利益率は最も低いが,営業利益率と経常利益率は最も高い
  • 営業利益率と経常利益率は最も高いが,売上総利益率は最も低い
  • 営業利益率は最も高いが,売上総利益率と経常利益率は最も低い
  • 経常利益率は最も高いが,売上総利益率と営業利益率は最も低い
g に関する解答群
  • 健康飲料事業から撤退する
  • 健康飲料事業の生産業務を清涼飲料事業や加工食品事業にも応用する
  • 清涼飲料事業,加工食品事業及び健康飲料事業のそれぞれの強みとなる業務を社外に委託する
  • 清涼飲料事業や加工食品事業の営業ネットワークを健康飲料事業でも利用する
解答選択欄
  • f:
  • g:
  • f=
  • g=

解説

fについて〕
A社の3つの事業別に、売上高総利益率、営業利益率、経常利益率をまとめたものが下表です。
各指標の計算式は、
 売上総利益率=売上総利益/売上高
 営業利益率=営業利益/売上高
 経常利益率=経常利益/売上高

です。
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3つの事業における収益性を比較すると、健康飲料事業は売上総利益率は最も高いですが、営業利益率および経常利益率は最も低くなっています。

f

gについて〕
設問中の記述からgは、「A社の清涼飲料事業や加工食品事業の強みを健康飲料事業に横展開する」方策であることがわかります。
  • 上記の方針と合わないので誤りです。
  • 上記の方針と合わないので誤りです。逆に収益性が高い清涼飲料事業や加工食品事業の生産業務を健康飲料事業に応用する必要があります。
  • 上記の方針と合わないので誤りです。自社における弱みを外部委託することは考えられる方策ですが、強みの部分を外部委託すると悪影響があることも考えられます。
  • 上記の方針と一致する適切な方策です。
    健康飲料事業の問題としてSWOT分析での弱み③「営業支援の不十分さ」がありました。収益性が高い清涼飲料事業や加工食品事業の営業ネットワークを健康飲料事業でも利用することで、この弱みの改善が期待できます。
g

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